日本百名山のひとつ「谷川岳」山行 (第67回 歩こう会)

 今年の夏は、記録的な猛暑の上、激しい降雨が各地に水の災害をもたらすなど厳しい状況が続きました。人知を超える自然の驚異を身に染みて思い知らされます。

 さて、我が「歩こう会」としては、暑さに負けてへたり込んでもいられませんので、涼を求めて上越国境の谷川岳(1,977m)に挑戦することになりました。谷川岳は一の倉沢など東面の大岸壁が多くのクライマーのターゲットになってきたが、数多くの遭難犠牲者を出してきたことで名高い。

 今回の歩こう会では谷川登山の初心者ルートであるロープウエイを使い天神平から山頂往復を試みることにした。

 8月23日(土)午前8時26分上毛高原駅着の上越新幹線(とき305号)で後記の8名が参加。この日は「午前中曇り午後はところどころで激しい雷雨」との予報であったため、雨具の携帯はもちろんだが、状況によっては熊穴沢避難小屋(1,465m)辺りから引き返すことも考慮した上での決行であった。

 8時35分発の関越交通バスで谷川岳ロープウエイを目指す。車内は我々一行の他2~3組の登山者らしき人達を含め8割がた埋まっていた。乗り合いバスのため行く先々で乗り降りする人々がいて、途中水上駅で時間待ちをした後9時20分にロープウエイ乗り場(標高750m )に到着した。

 ここから(フニテル)というゴンドラ(約15名乗り)で約10分、標高1,320mの天神平へ、記念写真を撮って、さらにペアリフトで1,500mの天神峠まで一気に高度を稼ぐ。「天神峠展望台から見る谷川岳の双耳峰は見事」とのことだったが生憎ガスっていて景観は得られなかった。

 午前10時いよいよ出発。広い岩尾根を降るが岩がごろごろして滑りやすい道だ。山腹を緩やかに巻いて、およそ50mほど下ったところが天神平からの合流点である。ここから木道となる。木道はところどころ傷んでおり、滑らないよう注意して緩やかに登る。ブナや石楠花の間を進むとやがて熊穴沢避難小屋に到着(10時50分)。小屋の中はガランとしてテーブルが一つ置いてある。10名程度は収納可能のようだ。小屋の前で先客が数名休んでいたので、我々も日陰を選んで小休止。気温は高くないが蒸し暑いので水分補給が欠かせない。中邑氏から梨のおすそ分けがあり喉を潤した。

 11時出発。松浦氏は暑さ疲れらしく、「ここからは無理をせず適当に散策して、先に天神平まで下りている。」とのことで残り7名が山頂を目指す。

 避難小屋を出てすぐに登りがきつくなり、ごろごろした大きな岩が前方を阻み、鎖場などもあって両手・両足の3点確保で慎重に登るが急坂が続くため、息が切れそうになり思わず「松浦さんの選択が正しかったか?」との愚痴も出そうな急登である。数組が前後して登っているので健脚組には次々に置いて行かれる。

 しばらく登ると森林限界となって、笹原が広がり視界が良くなった。右には西黒沢の源頭が大きく広がっており、ガスの切れ目から見渡せた。沢からの風が心地よい。ちいさな岩をいくつか超えると「天狗の留まり場」(1,660m)。避難小屋から約30分の道程だったが、急登続きなので長く感じられた。ここでも小休止&水分補給。阿萬さんからチョコレートのおすそ分け。他のグループの人が「ここから遙か上方に道標が見えるがそのすぐ左手が肩の小屋だ。」と教えてくれた。

 11時35分さらに上を目指す。風があるので大分楽になったがこの先も岩交じりのザレ場で木道も出てきた。えっちらおっちら上を見ながら登って行く。この辺りでは上から降りてくるグループに時々すれちがうようになった。「天神のザンゲ岩」(1,750m)を過ぎて長い木道の階段を上り詰めるとひょっこり肩の小屋の前に出た。(標高1920m)。12時5分前であった。

 取り敢えず昼食を摂ることにして小屋前のベンチに腰を落ち着け弁当を広げた。ここでも江藤氏から柿の葉すし・小野氏からはミニトマトを頂く。さらに、中邑氏が湯を沸かしコーンポタージュスープを作って皆に振る舞ってくれた。

 これまではガスが立ち込めたり晴れたりしていたのに、急に深い霧が辺りを覆ってきて、いよいよ雨が近いと思われた。

 阿萬氏と中邑氏は「頂上まで行っても何も見えそうにない、ここで待っている。」とのことで、残りの5名がザックを置いて空身で頂上へ。12時35分トマの耳(1,963m)到着。別名薬師岳。すっかり白い霧に覆われた山頂は晴れていれば一の倉沢の大岸壁など360度の大パノラマが満喫できるのに残念。写真を撮って雨の降らぬうちにとオキの耳を目指した。

 踏み跡に従って急な細い道を20mほど下る。足元にはホソバヒナウスユキソウ可憐な花がちらほらと咲いていた。露岩の多い痩せた鞍部からオキの耳(1,977m)別名谷川富士へ登り返そうとしたとき、強い風と共にザザッと横殴りの雨が降ってきた。オキの耳のてっぺんは霞んで見えない。帰りの道が雨で滑ると余計に時間もかかるので、引き返すことに決定。トマの耳に戻った。

 雨は止んだり、また降り出したりで本降りにはならなかったので、ともかく肩の小屋までたどり着き、小屋の中で雨具を装着、ザックカバーも付けて下山を開始。(13時20分)

 「往きはヨイヨイ帰りはコワイ」雨はほとんど止んでいたが浮石の多い急な下り道。足元に気を付けて慎重に下る。

 「天狗の留まり場」に着いた時には雨の心配が無くなっていたので、雨具を脱いで一服し、あとはひたすら下を目指す。途中で30名ほどの団体が登ってきたが「これから頂上を目指すのは大変だなー」と感じた。1,525mの小ピークを過ぎると難所の急坂。気を付けていても何度か滑って尻餅。鎖やロープなども頼りにして熊穴沢避難小屋に到着。(14時30分)

 小休止して最後の下り。今度は天神峠には向かわず、木道伝いに直接天神平へ降りて行く。木道が雨に濡れているので滑らないよう注意しながらの下山。天神峠との分岐でちょっと休憩して15時20分天神平に着いた。ロープウエイ山頂駅の広場では子供たちが駆け回っていた。松浦氏と無事再会。しばらく休んで「ビールでも」との声もあったが、まだ時刻も早かったので、先を急いで温泉に立ち寄ることに決定。

 ロープウエイで土合口まで下り、16時発の関越交通バスに乗車、JR水上駅でいったん下車して訪ねると徒歩10分ほど先に日帰り可能な湯の宿があるという。1時間後のバスに間に合うよう特急で入浴し(昨日の落雷でボイラーが故障したとかで、湯の出がいまいちだったが)、駅前の喫茶店(閉店していたが開けてもらって)でこれまた遽しくビールでのどを潤した。

 再びバスの客となり、上毛高原駅へ。18時25分発のマックス谷川425号に乗車。この先三々五々降りて行くため車中解散となる。心配したほど天気も崩れず、まずまずの山行であった。

参加者
(阿萬和水・江藤浩一・小野二六・加志田智久・中邑敬一・松浦靖弘・松永幸一・梅谷覚雄)以上8名

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